こころの栞

鶏口牛後

今年は酉年なので、鳥にちなんだお話をさせていただきます。

「鳥」が入った四字熟語に「鶏口牛後」というものがあります。これは中国の故事で、「鶏口となるも牛後となるなかれ」と書き下します。「牛のような大きな集団の最後尾にいるよりも、たとえ鶏のような小さなまとまりでもいいから先頭にいなさい」という意味で、大変一理ある言葉です。

ただ、よく考えますと人にはそれぞれ得手不得手な分野があり、考え方も違います。「常に先頭に立ちたい」という人もいれば、「ちょっと一歩下がって」という人もいて、ともすれば必ずしもこの言葉がベストとは限りません。そこで大事なことは、他者と比べてどうのこうのというよりも、自分自信の内面の中で、この「鶏口牛後」を心掛けた方がいいということです。

例えば「今日自分はこいうことをしなければならない、そのことは小さいことかもしれないけれども、自分なりにがんばってやっていこう」という気持ちを持つことです。一人一人がそのような気持ちを持ち励んでいくことによって、ひいては、世の中全体が明るくなっていくのだと思います。

比叡山を開かれた最澄様は、「一隅を照らす」という教えを残されております。これは「一人一人が自分の得意な分野で世の中の一隅を照らしていこう」という教えです。

牛の最後尾にいようが鶏の先頭にいようがそんなことはどうでもよく、大切なことは
自分がいる場所ではなく、その場所でいかに一生懸命やっていくかが肝要なのです。

合掌

坂井市 高岳寺住職
中野 純賢


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